映画「ミッドサマー」を観て
久しぶりにDVDを借りた。観た映画は「ミッドサマー」。
公式ページからのストーリー引用
家族を不慮の事故で失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人と共にスウェーデンの奥地で開かれる”90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった。
ネタばれ感想。
文明に取り残されたかのような小さなコミュニティで行われている伝統儀式の
模様を描いている作品。もちろんフィクション。
未開社会の伝統儀式は、こういうことが行われていたのかもしれない、と、思いながら観ていた。
①アミニズム的な神を崇拝。→ 神にささげる生贄が必要。人間の生贄も必要。
②個人よりも共同体の掟が大事である。
→ 高齢者は崖から落ちて命を絶つ儀式も受け入れなければならない。
③苦しみなど、感情の共有も試みられる。
→ ヒロインが泣き叫んでいる際の慰め方法として共同体の女性たちが大勢で同じ
ようにヒロインに呼吸を合わせ、泣き、そして抱き締める。
④性的な儀式もある。
→ 呪術的な手法プラス軽度にトリップが起きるような幻覚植物を使ってコミュテ
ィの外の男性を性的な儀式に参加させる。目的はコミュニティの子孫を作
ること。
⑤悪魔的で残虐も行われる。
→ コミュニティの崇拝対象や掟破りのことを行うと制裁がある。ホラーの作りな
ので少しばかりグロい。
ホラーだけれど、怖いという感情は起こらなかった。一体これは何なのか、どういうことなのか? 何を目指そうとしているのか、よく分からないまま、画面を見ているという感じ。タペストリーなどに儀式の内容が暗示される絵が描かれて、今後のストーリー展開の伏線張っているのだろうと思わせるシーンもあり、予想通りといえば予想通りの展開だが、子種を得る儀式では女性たちがまさかの全裸で、子づくりしている女性と同じように喘ぎ声を出しているシーンは私の予想をはるかに超えた衝撃のシーンだった。
何なのだ、これは?と、思わせぶりな「異様で奇妙」な出来事を並べているだけのストーリーの中でかなりのインパクトのある場面だった。
最後の最後、ヒロインの女性の笑顔が見られたので、この映画は個の魂が救済される話なのだとふと思った。
両親と妹が自死し、精神的にもかなり不安定で、理解者がいないヒロインが、まったくの異文化の中で、必要とされる存在として受け入れられる。共同体だから、彼女の悲しみもきちんと受け止められ、シェアされる。
自分にはもう愛情がなくなっていた恋人も神への捧げものとして火をつけられて消されていく。裏切者が自分の手ではなく、個人でもない、共同体という誰も罪にはならないモノらの手によって、殺人という禍々しさもなく、神への捧げものとしむしろ存在自体が神々しく昇華されていくのだ。
なんともいえない高揚感が魂をつらぬいたと思う。
ヒロインは彼女に好意を寄せている共同体の中で育った男性と一緒にコミュニティの中で生きていくことと思う。もう天涯孤独であるという意識に苦しむことはない。独りぼっちの苦しみからは逃れられたのだ。掟には縛られ、自由と引き換えではあるけれど。